なにがどうして自分は今小学校の壁にでっかい壁画を描いているのか

こちらの壁画を福島県猪苗代、翁島小学校で描かせて頂きました。タイトルは『wild rose』です。

どうも漫画家・イラストレーターの小栗です。

自分だけでなく今回は他のアーティストや画家、写真家、版画家など様々な肩書の芸術家たちが勢ぞろいし、ツォモリリ文庫を運営するウォールアートプロジェクトの芸術祭を盛り上げていました。

そんな中、漫画家イラストレーターという、普段は商業の世界にいる自分がそうそうたるアーティストたちに混じって参加していたのです。

商業的なイラストの世界はなんともわかりやすく、絵やデザインが必要でたまらない人たちにそれを労働として提供するシンプルな世界です。

ところが小学校の壁画に絵を描くとは一体何がどうして、こんなことになっているのでしょうか?

小学校なわけです。児童たちが日々勉学にいそしみまくるはずの場所に、謎のお兄さんが現れ、壁にばしゃばしゃと絵の具をのせていくわけですから下手したら御用というレベルの話なんです。

自分がフェスティバル当日に目撃した光景なのですが、とあるおじさんが今まさに絵を描いている画家の一人に話しかけていたのです。

「これ、どうするの?高く売れるのかい?」

なんてもっともかつシンプルなストレートパンチャーなんだと思いました。

「芸術って何がいいかってわからないじゃない、それでもこんなに描いちゃうのがわからないんだよね」

このおじさんのパンチは、画家・香川大介さんの作品を見た驚きがもたらした素直な感想なんだと思いました。

おじさんは通り過ぎることなく香川さんの描く超絶異空間をまじまじと眺めていたからです。

このおじさんのような疑問をもつのは、ある意味よく考えて絵そのものをじっくりと見てくれているからだと思います。

小学校の壁に絵が描かれても、児童たちの成績は飛躍的に向上するわけではないはずです。それだったら同じお金と手間を使って児童がみるみる賢くなる何かに投資する手もあるのではないか?

しかし、おじさんと同じようなシチュエーションで絵を描いている自分のそばを通りかかった児童が感想を言ってくれたことがありました。

「これは翁島小学校にしかない絵だね!」その時ちょっといいことしたんじゃないかなと思ったんです。

自分たちの育った小学校やそのコミュニティに対して愛着や良い思い出をもてる、その手助けができているんじゃないのかと思えたからです。

地域には様々な価値があると思います、産業があり人が多くいて、生産性が高いということも大切な事だとは思います。

しかし、それ以前に自分が今生きているその地域とそこにいる人々との時間や思い出を、理屈抜きでいいものだと思えなくては、どれだけそこが発展をしてもそれは皆にとって満足のいく結果になるのか? 近代はそのことを問われ続けていると思います。

正直そこに絵があるだけで、みるみる郷土愛がはぐくまれるとは思っていません。むしろ自分が描かせてもらったここ翁島小学校と猪苗代にはすでにそういったものは、十分に存在しているように思いました。

そんな土壌がある上に、みながいいと思ってくれる絵は存在できるのだと思います。

何がいいか、ものすごく売れるものなのかはわかりませんが、そこにいる人々がここにあってよかったと思える絵がそこにあることが、この地域の豊かさの証明でもあるのだと感じます。この壁画にはたくさんの花が咲いているのですが、これは地域の人々が児童たちや、来場者にステンシルという技術を用いて咲かせてくれたものです。

この地域と縁をもった人々の花ができるだけ長い間ここに咲き続けてくれたらと思います。

 

この記事を書いたライター

おぐりちはや
調査漫画家探偵を自称する漫画家、ライター
にしてツォモリリ文庫のビジュアル、広報担当スタッフ。
漫画とブログ記事を交配させたような記事を垂れ流し続けるブログサイト
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